ベトナム人留学生事情について

グローバル戦略の一環として2008年に政府が掲げた「留学生30万人計画」は、目標の数値30万人を早くも2018年に達成した形となっています。この計画による留学生の出身国で最も多いのは、中国に次いでべトナム。2020年12月の出入国管理庁の統計表から見ますと在留資格・留学生のベトナム人は65818人となっています。

「留学生」という名の「出稼ぎ労働者」

日本を目指すベトナム人留学生の理想とする将来のコースは、ベトナム国内に進出している日系企業に日本で在留中に就職し、そこからベトナム支社へと出向するということです。

ただし日本の大手企業では、外国人の採用にはある一定のハードルを設けているため、そこへ入社するためには難関であると言われています。
また、ベトナムでの高学歴人材であっても日本社会の習慣や日本語のレベル、また労働条件などに適応できず、仮に採用された場合でも長期雇用が続かず離職する者もいます。

一方、在留資格は留学生であっても、実は出稼ぎを目的で来日しているベトナム人も多く見られます。

稼ぐことが目的であるベトナム留学生にとっては、日本の法令である”留学生は本来の目的である学業を重視し、アルバイト28時間まで”という労働時間の上限を超えてしまうケースも多々発生しており、そういった留学生は、国外退去強制の対象となっています。

当時、「留学生30万人計画」は日本に行けばアルバイトで稼ぎながら勉強できる、というキャッチフレーズで募集が行われており、日本に夢を託して来日したベトナム人の若者が殺到しましたが、しかし、現状は、日本社会で生きて行くためには学業も生活も持続できない環境下である留学生が多く見られます。

法務省の調査(2020年7月時点)では、ベトナム人不法労働者数は15,511人/不法残留のベトナム留学生3525人となっています。

このうち在留資格・留学生を取り消された学生や彼らが通っていた日本語学校は罰則の対象となり、ベトナム人留学生が日本に来た目的と日本社会の法律にそぐわない状況はうまく歯車の合わない結果を生み出しています。

この現状の背景には、ベトナム人が在留資格を取得して留学生として日本へ来るまでのプロセスに、ベトナムと日本を仲介する業者に多額の借金をし、その返済のために日本で働きながら学業もサボらずに日本社会で生きて行かなくてはならないという現状があり、こういった環境下では法を犯してまでも稼がなくてはならないという現実がでありました。

政府が掲げる在留資格・留学生の概念とベトナム人が稼ぎたいという目的がミスマッチとなり、さらにグレーゾーンの仲介業者の存在が、純粋に学びながら稼げると夢を持って来日したベトナム人留学生のモチベーションを崩してしまう結果となってしまいました。

在留資格・留学生と新たな在留資格のスタート

政府が掲げた「留学生30万人計画」は数合わせとして30万人以上達成され、この時期に合わせて次に新しく設けられた在留資格が特定技能です。
特定技能は日本の労働力不足を解消するために、各業界14業種で外国人が働くことができるようにした在留資格です。
ベトナムは特定技能の人材送り出し国として期待されている国のひとつです。
ベトナム国内では在留資格・留学生から特定技能への関心が高まり、また、日本に在留中の留学生たちにとっては特定技能への変更が可能となり、就労の在留資格へと変更できる手段として注目されています。
ただし、留学生から特定技能への在留資格変更時には、各項目ごとにクリアしなければならない条件が提示されています。
在留資格の変更申請には、希望の業種(建築業以外の業種)の特定技能試験と日本語試験に合格していることと、採用予定の会社との雇用契約が必要です。
特定技能試験は各業界別に試験があり、日本語試験は「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」のいずれかに合格する必要があります。

また留学生で28時間超過のアルバイトをした者に対しては対象外の在留資格変更申請となっています。

ベトナムは、親日国であり、多くの日系企業が進出し経済成長率が高いことで知られていますが、日本を目指すベトナム人の層の大半は、学びたい目的の前提に稼ぎたいという現実があったということを私たちはあまり知ろうとしなかったことが、問題の根底にあるようです。

ベトナム留学生が日本で稼ぎながら学ぶということができない現状が、様々な犯罪をも生み出しています。

また、新たに制定された在留資格・特定技能においては、ベトナムをはじめ各国の送り出し事情を踏まえて、日本政府、そして日本側の雇用する企業がそれぞれに上手く連携されることが期待されています。

そこには、まず来日するベトナム人または各国の留学生や労働者が正しいアドバイスを受けながら、適切なコースや労働条件にそったプロセスを踏むことがができることが望まれています。