対ベトナム貿易(EPA/FTA)について解説

ベトナムにおける貿易黒字は、2020年新型コロナ禍で世界経済がマイナス成長の中、輸出・輸入とも過去最高の出来高を達成しました。その背景には各国とのEPA(経済連携協定)やFTA(関税自由協定)という、WTO加盟国の経済政策があります。(両社の意味合いはほぼ同じ扱いです)それらの政策が現在の経済状況にどのように影響しているのか実態を検証していきます。

EPA/FTAのメリットとデメリットとは

1. EPA/FTAとは2国間の貿易上の障壁を取り払うことで、経済相乗効果の向上を目指し、2国間の経済統合を目的に締結された協定です。
両社の違いは概ね同じ目的での協定ですが、FTAとは関税撤廃や減税、外貨規制に関連の規制等、いわばお金にかかわる内容に対しEPAはFTAの内容を含めた、投資ルールや人的交流・知的財産、各分野での協力まで包括的協定です。

2. EPA/FTAのメリットとデメリット
最大のメリットは相互国間にて関税撤廃(又は税率引下げ)による、自国生産品の相手国への流通による経済効果です。
その反面、デメリットは相手国の生産品を受け入れ多く流通することで、自国産業が衰退、景気の悪化を伴うことになります。(国内産業の保護政策も重要)

関税撤廃及び関税率低減の実態

ここではFTAによる関税撤廃や関税率引下げについて、運用面でどうすればその恩恵を得ることができるか、実態についてみていきましょう。
関税の対象となる輸出貨物が免税又は減税になれば、トータル物流費として大幅な経費削減と共に、企業に大きな利益をもたらすことになります。

<実際の運用方法>
すべての輸出入貨物にはHSコードという関税分類(識別)があり、関税が設定されています。貨物がFTAの対象になるかどうかを事前調査します。
制度適用の前提として輸出貨物の原産地が輸出国である事が条件となります。
対象貨物が輸出国で製造されている(原材料が100%原産地である必要はない)証明書類を公的機関(日本では商工会議所)に提出・審査を受けます。
審査に合格した輸出貨物に限り、この制度の適用を受ける為の特定原産地証明書を発給申請することができます。(一般の原産地証明書とは別)
輸入者が特定原産地証明書を税関に申告・提出することで、免税又は減税の適用をうけることができます。
このようにこの制度の恩恵を受けるには煩雑な手間がかかりますが、それは最初の登録時だけで、一度登録すれば他の貨物も同じ流れとなります。
税金は払わなければならないものという日本人の認識に対して、対ベトナム貿易における海外企業は、ムダなお金は一切払いたくないという意識が強いです。それが対ベトナム貿易好調の要因でもあります。

各協定内容とベトナムが受ける恩恵

対ベトナム貿易の原動力となるEPA/FTAとはどのような協定内容かを見ていきましょう。
これら世界貿易のルールはすべてWTO(国際機関)が決めており、現在加盟は61か国です。
ベトナムEPA/FTAで一番大きく影響を及ぼす協定のグループは、
(1) 東南アジア(ASEAN)諸国連合 経済共同体 (AEC 1995年~10か国)
(2) 環太平洋パートナーシップ協定 (TPP 2018年12月~ 11か国)
(3) EU/ベトナムEVFTA (2020年7月~)

(1)東南アジア(ASEAN)諸国連合(10か国)
加盟10か国は2009年発足から2015年~2018年と段階を経て関税撤廃を実施しきました。

(2)CP(包括的及び先進的な)TPP環太平洋パートナーシップ協定(Trans Pacific Partnership Agreement)
当初ベトナムが2008年11月にTPP加盟以来、アメリカ通産省長官や世界銀行も、ベトナムがこの恩恵を最も得るとコメントしているように、各国との協定において関税撤廃により大幅な成長を遂げています。
その一例・繊維・アパレル部門においては
対米国:ASEANでは取引NO.1、シェアは繊維部門3.4%から11.4%に成長
対EU:2番目20.7%のシェア、品目は1.繊維 2.家具 3.革製品
対中国:2010年中国・ASEAN自由貿易協定締結
米国TPP離脱をきっかけに中国・韓国がベトナムに製造拠点を移管開始
原材料の綿糸を関税ゼロでベトナムから輸出拡大。
製品を中国から関税ゼロ輸入 それに便乗し海外大手商社(韓国・太平洋物産や日本・日新紡績など)が参入するなどです。

では具体的にどのくらい減税されるのでしょうか?
・各協定国品がベトナムから輸入した場合 品目ベース78%~95%(10年後ゼロ)
・各協定国品からベトナムが輸入した場合 品目ベース66%~86%(5年後97.8%)

(3)EU/ベトナムEVFTA (ベトナムEU自由貿易協定 2020年7月)
日系企業もこの協定を活用しています。
EUからベトナムが輸入した場合:65%の品目の関税が即時撤廃⇒さらに以降10年間で残りすべて撤廃
EUがベトナムから輸入した場合:71%の品目の関税が即時撤廃⇒さらに以降7年間で残りすべて撤廃

まとめ

このようにベトナムは世界のどの枠組みにおいても、貿易面での関税優遇措置を受けられ、まさに欧米・中国・ASEANの中でもインドシナ半島最大の貿易大国なのです。
また今後ベトナムは対米中の5G通信戦争において、中国とEUを結ぶデジタルシルクロードの中継地点として、得意分野のエレクトロニクス産業でEVFTAを活用しさらなる発展を遂げることは間違いないです。